賃金の未払いと民法改正について

民法改正に伴う未払い賃金はどうなる?

2017年5月26日に「民法の一部を改正する法律」(以下「改正民法」といいます)が国会で可決成立しました。債権や契約に関しては、明治29年に制定されて以来の大きな改正ということになります。施行日は2020年の4月1日と決まりました。

今回の改正では、を廃止し、債権について権利を行使できることを知った時から5年間、または権利を行使できる時から10年間の場合、時効によって消滅すると改正されることになりました。

従業員の未払い賃金請に影響は?

なお、企業における短期消滅時効で最も身近なのは従業員の未払い賃金請求権ですが、これについても影響があるのでしょうか?

現状の確認

民法(174条1号)では、従業員の賃金債権(未払い賃金等)の時効は、短期消滅時効として1年とされています。

労働基準法(115条)で消滅時効は2年とされています(退職手当については5年です)。
これは労働者の保護を手厚くするために時効を延ばしています。

今後の見通しは?

今回は民法の改正であり、労働基準法上の改正ははっきりとは決まっていません。
しかし上述した現行の民法と労働基準法の関係で見ると、労働基準法消滅時効が民法より短いままということは考えにくいと思います。

 

会社が受けるリスクは? 未払い賃金があった場合に会社が被る影響

消滅時効が2年から少なくとも5年に変更される可能性があります。
これにより、
・未払い賃金の額が増える
・額が増えることで請求の件数が増える
と言ったことが考えられ、会社の経営に大きな影響を及ぼすことになります。
労働した対価をきちんと支払うことは法律上当然のこととされていますので、会社の経営に大きな影響を及ぼすことになります。

 

リスクの予防のために 労務管理の明文化

・労働条件通知書または雇用契約書
・出勤簿(勤怠管理)
・賃金台帳
・就業規則等
などの労務管理をする上でのルールやデータを明文化しておくことをお勧めいたします。
普段はどんぶり勘定で問題がなくても、いざという時(残念ながら従業員が労基署に駆け込む等)には明文化している情報が会社を守ってくれます。

まれに明文化してしまうとその分義務が強くなるからと敬遠される社長さんとお会いしますが、従業員の方が手帳に勤務時間をメモしていたらそちらが証拠になってしまいますよとお話しています。

 

具体的には? 助成金制度を活用して労務管理をお勧めします

実際にルールやデータを明文化するといっても具体的なイメージが湧かないと言うこともあると思います。
例えば出勤簿(勤怠管理)ですが、必ずしもそのための機械を買う必要はありません。必要な事項が記載されていれば手書きのものでも問題ありません。

費やす時間やお金が・・・という現実的な問題もあると思います。
そういった場合に、厚労省の助成金制度を活用してそのお金を労務管理に充てるという方法もあります。助成金は手続きが煩雑で、時間がかかるものが多いのですが、返済が不要という何物にも代えがたいメリットがあります。

またそのような労務管理の仕組みを導入する際に、変形労働時間制度や固定残業代の制度を導入することで、賃金の支払いを抑えることができます。

ご不明な点がございましたらばお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォーム

お問合せ

 

<参考>法務省 民法(債権関係)の見直し~「民法の一部を改正する法律」の概要~
http://www.moj.go.jp/content/001242837.pdf